院長ブログ
2022-01-13
現在、新型コロナウイルス感染の第6波に突入したといわれております。
病原性は低下しているものの感染力はデルタより、
より強力なオミクロン株が流行しているといわれています。
- 新型コロナ感染症かすぐ知りたい
- 新型コロナ感染症かどうか正確に判断してほしい
そのような方のために当院ではIDNOW™による新型コロナ感染症遺伝子検査を導入いたしました。
今回は遺伝子検査の特徴と精度などについて解説していきます。
IDNOW™による新型コロナ感染症遺伝子検査とは
(Abbot社HPより転載)
IDNOW™による新型コロナ感染症遺伝子検査とは「新型コロナの遺伝子(RNA)を抽出・増幅することで、
新型コロナかどうかを判定する」検査です。従来、新型コロナかどうかを判定する検査方法として
広く知られているものに「PCR検査」や「抗原検査」がありますが、今回の遺伝子検査は
等温核酸増幅法の1つである NEAR法 (Nicking Enzyme Amplification Reaction)となります。
NEAR法の特徴としては、以下の通りです。
- PCRと同じ「核酸検出検査」に該当する:10日以降の症状がある方の陰性証明にも
使用することができ、ガイドライン上でもPCRと同等の信頼性を持っているのが特徴です。
- (参照:COVID-19病原体検査の指針による)
- 非常に判定までがスピーディー: 検査自体は陽性に最短5分、陰性でも13分で判定することができます。
- (操作に追加で時間がかかりますので、複数人される場合は結果を電話連絡させていただく場合があります)
- 海外渡航の陰性証明にも使用されている:検査の信頼性から、アメリカ(ハワイ含む)や
韓国などの渡航の際にIDNOW™を用いた検査でも陰性証明として使用されています。
PCR検査の原理
PCR検査とNEAR法による検査を理解するには、遺伝子について理解しないといけません。
全ての生物の遺伝子はDNAとして保存されます(ウイルスはRNAです)。
DNAは、2つの鎖がつながるように記録されています。
遺伝子とは、DNAの中の特定の機能をもった一部分のことです。
例えばウイルス特有の遺伝子があるかを見るには、
遺伝子を目で見るわけにいかないのでウイルス特有の遺伝子を増やして
人間の目にもわかるようにしてあげる必要があります。
そこで、PCR検査では、
- 温度を上げると、DNAが1本ずつに分かれるのを利用して、温度を上げて1本ずつにします。
長いDNAであるほど、高い温度が必要になります。
- ウイルス特有の遺伝子がわかる標識(プライマー)をつけます。
標識をつけられると、プライマーの部分から先の部分だけ、DNAが増幅されるようになります。
- 特殊な酵素を用いて、もう片方のDNAを伸ばしていきます。両端を認識する必要があるので、
プライマーは2種類必要ということになります。
- 急速に冷凍します。急速に冷凍するほど、長いDNAは結合しにくいですが、
短いDNAは結合しやすくなります。両端にプライマーが付けられ短くなった
- ウイルス特有の遺伝子だけは、短いDNAになっているので、増幅しやすい環境になります。
このように、温度を上げ下げすることで目的となる遺伝情報を増やしていくのが「PCR法」です。
(本当はウイルスはRNAなので、最初特殊な酵素を使ってDNAに変換しています)
非常に簡便であり、機械が自動でやってくれるので、人の手は最小限になります。
また、各設定温度や時間を変えることで、様々な長さの「遺伝情報」にも対応できるのが特徴です。
しかし、温度を上げ下げしないといけない分、時間がかかります。
それを解決する方法がNEAR法でも見られる「等温核酸増幅法」で
温度を上げ下げしないでも遺伝情報を増幅できる方法になります。
IDNOW™による「NEAR法」と「PCR法」の違いは?
上記を踏まえると、NEAR法とPCR法の違いは次の通りです。
- NEAR法の方が素早くできる: NEAR法は等温核酸増幅法の1つで、
温度を上げ下げせずに遺伝情報を増幅するので、時間が短縮されるのが特徴です。
- NEAR法は短い遺伝情報をターゲットにするのに向いている:NEAR法の原理上、
ターゲットとなる遺伝情報のサイズが(<100nt)と短くなります。
NEAR法を一言でいうと「短い遺伝情報をPCRよりも大量に作る」のが特徴です。
IDNOW™の遺伝子検査では「ウイルスに特有の遺伝情報」を、短い領域に絞って増幅することで、
さらに短時間に人間の目にも見えるようにしたものといえます。
そのため行っていることは「遺伝情報の増幅」であり、PCR法と原理上もほぼ同等といえるのです。
IDNOW™による新型コロナ感染症遺伝子検査の精度は?
では IDNOW™による新型コロナ感染症遺伝子検査 の精度はどれくらいでしょうか。
米国応急診療所(アージェント・ケア)5カ所で行われた計256例の検査結果では、PCR検査と比較して
陽性一致率94.7%、陰性一致率98.6%でした。
お互い手技上のエラーなども考えると、非常に高い精度だといえます。(Abott社HPによる)
また、臨床性能試験成績では、新型コロナ患者からの議事陽性検体30検体と陰性検体30検体で、
すべて陽性陰性を正確に判別できています(IDNOW™添付文書による)。
また、英国型変異株や南アフリカ変異株などの変異株に対しても、
検査の精度に影響がないことが確認されています。
実際それを受けてアメリカ(ハワイ含む)や韓国などでは、
「IDNOW™の陰性結果で海外渡航における陰性証明としてよい」としており、
非常に高い信頼性であることがうかがえるでしょう。(2021年11月現在)
IDNOW™による新型コロナ感染症遺伝子検査の費用
IDNOW™による新型コロナ感染 遺伝子検査の費用は次の通りです。
症状のある場合・濃厚接触者 |
無料(公費でうけることが
できます) |
症状のない場合 |
11000円(診察料・税込) |
* 症状のある場合は、事前連絡の上、発熱外来の受診をお願いします。
* 症状のない場合、電話予約にて検査を受けつけます。
自費の場合のIDNOW™検査の流れ
「IDNOWによる遺伝子検査を行いたい」という場合の流れとしては以下の通りとなります。
- 当院電話連絡にて日時を決定します。(検査時間は午前10時~12時と午後3時~5時になります)
- 来院後、遺伝子検査に関する同意書に記載していただきます。
- 遺伝子検査を行います: 鼻の奥から検体を採取します。
結果は検査当日にお渡しするか、後日お渡しになります。
もし陽性であった場合は、現時点では保健所への連絡を行い、指示に従っていただくことになります。
2021-07-09
現在、当院でも新型コロナウイルスワクチンの接種を行っています。
新型コロナウイルスワクチン接種後の発熱などについては、市販の解熱鎮痛薬で
対応することも考えられるとし、厚労省はウェブサイト上で解熱鎮痛薬の
具体的な種類を提示しています。ワクチン接種の広がりとともに、接種後の発熱や
痛みなどに備えて薬局などで購入できるアセトアミノフェン含有OTC薬の需要が急増しており、
一部品薄になっている製品もあります。
薬局やドラッグストアなどにおいて正確な情報提供が求められています。
なお、ワクチン接種後、症状が現れる前に解熱鎮痛薬を予防的に繰り返し内服することは、
現状では推奨されていません。
ワクチン接種にあたっては
(1)他の薬を内服している場合や、妊娠中・授乳中、高齢者、胃・十二指腸潰瘍や腎機能低下などで治療している
(2)薬などでアレルギー症状や喘息を起こしたことがある
(3)激しい痛みや高熱など症状が重い、または症状が長く続いている
(4)ワクチン接種後としては典型的でない症状が見られる
上記のような場合には、主治医や薬剤師に相談するよう求めています。
当院では接種前に問診を行っておりますが、その際に何かわからなければ
質問ください。
2020-09-09
現在も新型コロナウイルス感染が流行しています。
当院では高血圧を治療中の患者様がたくさんいらっしゃいますが
今回横浜市立大より興味深い報告があったのでご報告いたします。
新型コロナウイルスは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して
細胞に侵入することが明らかになっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と
レニン-アンジオテンシン系(RAS)との関連が注目されています。
今回、横浜市立大学附属 市民総合医療センター 心臓血管センターの
松澤 泰志氏らの研究グループが、COVID-19罹患前からのACE阻害薬または
ARBの服用と重症度との関係について、多施設共同後ろ向きコホート研究
(Kanagawa RASI COVID-19 研究)を行ったと報告されました。
Hypertension Research誌オンライン版2020年8月21日号での報告です。
本研究では、2020年2月1日~5月1日の期間、神奈川県内の6医療機関
(横浜市立大学附属市民総合医療センター、神奈川県立循環器呼吸器病センター、
藤沢市民病院、神奈川県立足柄上病院、横須賀市立市民病院、横浜市立大学附属病院)に
入院したCOVID-19患者151例を対象に、病態に影響を与える背景や要因の解析が行われました。
追跡調査の最終日は2020年5月20日で、すべてのデータは
医療記録から遡及的に収集されました。
高血圧症およびほかの既往歴の情報は、通院歴、入院時の投薬、および
ほかの医療機関からの提供内容に基づいています。
主な結果は以下のとおり。
・平均年齢は60±19歳で、患者の59.6%が男性でした。
151例のうち、39例(25.8%)が高血圧症、31例(20.5%)が糖尿病、
22例(14.6%)にACE阻害薬またはARBが処方されていました
(ACE阻害薬:3例[2.0%]、ARB:19例[12.6%])。
・151例中、14例(9.3%)の院内死があり、14例(9.3%)で人工呼吸、
58例(38.4%)で酸素療法が必要だった。
入院時、肺炎に関連する意識障害は14例(9.3%)、
収縮期血圧<90mmHgに関連する意識障害は3例(2.0%)で観察され、
少なくとも13例において、新型コロナウイルス感染が原因とされた。
22例(14.6%)がICUに入院した。
・患者全体を対象とした単変量解析では、65歳以上
(オッズ比[OR]:6.65、95%信頼区間[CI]:3.18~14.76、p<0.001)、
心血管疾患既往(OR:5.25、95%CI:1.16~36.71、p=0.031)、
糖尿病(OR:3.92、95%CI:1.74~9.27、p<0.001)、
高血圧症(OR:3.16、95%CI:1.50~6.82、p=0.002)が、
酸素療法以上の治療を要する重症肺炎と関連していました。
・多変量解析では、高齢(65歳以上)が重症肺炎と関連する独立した要因だった。
(OR:5.82、95%CI:2.51~14.30、p<0.001)。
・高血圧症患者を対象とした解析の結果、
ACE阻害薬またはARBをCOVID-19罹患前から服用している患者では、
服用していなかった患者よりも、主要評価項目の複合アウトカム
(院内死亡、ECMO使用、人工呼吸器使用、ICU入室)
における頻度が少ない傾向だった(14.3%vs.27.8%、p=0.30)。
また、副次評価項目については、COVID-19に関連する意識障害が有意に少なかった
(4.8%vs.27.8%、p=0.047)。
著者は「われわれの知る限りでは、これがわが国で初めてCOVID-19患者の
臨床アウトカムを検討した研究だ。
今回、炎症に対するRAS阻害薬の保護効果が、ACE阻害薬/ARBの使用と
意識障害の発生減少を関連させる1つのメカニズムである可能性が明らかになった」と記しています。
参考:ケアネット
当院では高血圧でACE阻害剤やARBで治療中の患者さんが非常に多く
服薬メリットについても説明を行っています。
まだまだ新型コロナウイルスの感染が収束しないなか
今後もさらなる研究結果が期待されるところです。
2020-08-25
現在、新型コロナウイルスの感染の第2波だといわれています。
8/24に厚生労働省に助言する新型コロナ専門家の会合が行なわれました。
これまでに亡くなった人や重症になった人たちの分析などが報告されました。
第1波の流行と比べて現在の流行では、亡くなった人の数は少ないものの
高齢の人の致死率はほとんど変わっていないということです。
8月24日開かれた会合では、現在の感染状況について流行はピークに達してはいるものの、
このあと減少するかどうかは現時点では分からず、感染の再拡大への警戒が必要な状況だと評価しました。
また、国立感染症研究所から、第1波の流行と現在の第2波の流行のそれぞれの致死率が報告されました。
その結果、ことし5月までの第1波の際の致死率は6%だったのに対し、
6月以降は4.7%と低下傾向になっていました。
ただ年代別に見てみますと、50代、60代の致死率は第1波が2.8%、第2波が3.1%。
また70代以上の致死率は、第1波の際が25.1%、第2波が25.9%とほとんど変わっていなかったということです。
また、ことし3月までの516人分の患者データから人工呼吸器を装着したり、
死亡したりするリスクと関係のある要因を分析したところ、
男性は女性に比べてリスクが2.8倍になっていたほか、
基礎疾患については
▽高尿酸血症が3.2倍
▽慢性肺疾患が2.7倍
▽糖尿病が2.5倍
▽脂質異常症が2.1倍 になっていたということが報告されました。
もともと糖尿病、高血圧や慢性肺疾患のコロナ感染症の重症化の報告はこれまでにも
あったのですが、今回、高尿酸血症の重症化率が肺疾患よりも高かったとの報告には
我々医療者も正直驚いています。
高尿酸血症は、動脈硬化性疾患との関係は現在では常識となっていますが
感染症との関係は報告がなく、これからの解析などが期待されます。
当院では上記疾患のような生活習慣病に常に力を入れ診療を行なっています。
そのような方は全力でサポートしてまいりますのでいつでもご相談ください。
2020-05-27
現在、世界中で、新型コロナウイルス(COVID19)の感染症が世界中で
蔓延しています。
わが国も政府が行ってきた独自の感染対策にて何とか第1波を封じ込めようとしています。
当院でも様々な感染対策を講じておりますが、
皆様も手洗い、うがいなど常に心がけるようにいたしましょう。
ところで、当院では、循環器疾患、生活習慣病である高血圧、
糖尿病や脂質異常症に加え、睡眠時無呼吸症候群に関連する不眠症
などにも注力し、診療を行ってきております。
睡眠障害は睡眠時無呼吸症候群に代表される内科的疾患の
除外が大切です。
当院ではしっかりと問診を行い、必要であれば内科的疾患の除外を行ったうえで
睡眠障害の治療を行います。
睡眠障害は、床に入ってもなかなか寝付けない入眠障害、
夜中に何度も覚醒する中途覚醒、朝早く目が覚めてしまう
早朝覚醒などに分類されます。
わが国に限らず、古くからハルシオンやデパスなどに代表される
ベンゾジアゾピン系薬に代表される不眠症治療薬が用いられてきました。
しかし、以前当ブログでもお伝えいたしましたように2014年に
新規睡眠導入剤ベルソムラ(スポレキサント)が発売になりました。
当薬剤はオレキシンの受容体への結合をブロックすることで、
過剰な覚醒状態を抑制し、脳を覚醒状態から睡眠状態へと
移行させるという生理的なプロセスをもたらす世界初のオレキシン受容体拮抗薬でした。
しかし、どうしても従来のハルシオンなどに代表されるベンゾジアゾピン系薬
に比してどうしても効果が弱いことが言われてきました。
しかし、今回発売されるデエビゴ錠(レンボレキサント)は
海外の国際共同第3相プラセボ/ゾルピデムER対照比較試験でも
プラセボ、ゾルピデムER(日本では未発売のマイスリーER錠)ともに
有意差をもって入眠、中途覚醒ともに改善したとの結果が報告されています。
すなわち、従来の認知症になりにくいといわれるオレキシン受容体拮抗薬の中でも
かなり期待が持てるといえます。
睡眠障害は高血圧や糖尿病につながる大事な疾患といえます。
しかし、睡眠導入剤で認知症リスクが上がるのでは意味がないといえると思いますが、
デエビゴ錠は認知症が急増しているの我が国の睡眠治療剤として期待できる
薬剤ではないかと考えています。
当院でもすでに同薬剤の勉強会を開催し、今後の不眠治療に導入する予定です。
もし、デエビゴ錠についての質問等ありましたらお気軽にお問い合わせください。
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