院長ブログ

CPR インデックス

2017-08-03

今回はCPRインデックス(CPI)について説明したいと思います。

当院は循環器内科として心疾患に限らず生活習慣病の患者さんが非常に多く、
なかでも糖尿病の患者さんがたくさんおられます。その中でもインスリン治療を
行っている患者さんもいらっしゃいます。
CPR(C-ペプチド)というものをご存知でしょうか。
CPRは血液検査と尿検査で行う検査になります。

CPRは膵臓からインスリンと共に分泌されるものですが、
特にこれ自体は使われずに尿として出されてしまうものです。
このCPRは実は注射のインスリンには含まれておりません。
インスリンと共に分泌され、しかもインスリン注射には含まれていないという事は
CPRの数値は膵臓自身のインスリンを分泌するβ細胞の能力を示している事になります。

このCPRを使って、CPRインデックス(CPI)というものが有用な指標として使われています。
CPIの計算式は、CPI=食前の血中CPR÷食前の血糖値×100で計算されます。
例えば食前のCPR=1.2、食前の血糖値=100だった場合には、CPI=1.2という数値になります。

さて、このCPIは何の指標として使われているのでしょうか。

このCPIという数値は実は糖尿病の治療法を決定する上で使われている指標であり、
この数値が1.2以上の場合は、食事や経口薬治療、
0.8未満の場合はインスリン療法を選択するなどの判断材料になります。
本来の経口薬であるダオニールなどのスルホニルアレア薬(SU剤)や
グルファストなどのインスリン分泌薬などはインスリン枯渇の問題などもあり
最近はあまり使用されなくなってきています。
ですので、そういう薬剤を使用するなら、将来CPRが低下する
(膵臓が疲弊する)事にもなりますので、場合により一時的にもインスリン療法を導入し、
CPRで膵臓の回復をみていくという方法がよいのではないかとされています。

当院では患者様としっかりと話し合いながら治療方針を決定していく方針としております。
糖尿病に限らず、高血圧、コレステロールなどお気軽に相談ください。

脂肪肝(NAFLD、NASH)

2017-04-26

比較的すごしやすい季節になってきましたね。

さて今回は脂肪肝について考えてみたいと思います。

当院では循環器疾患を 中心に、脂質異常症(高脂血症)
高血圧、糖尿病などの生活習慣病の患者さんが非常に多く
いらっしゃいます。
必然的に採血検査が多くなりますが、特に
メタボリックシンドローム、糖尿病の方に
高率に認められるのが肝機能障害です。
肝機能障害の原因にはいろいろとありますが、
元来問題となってきたウイルス性肝炎が、優れた薬剤の
登場によりほぼ完治できる時代になりました。
そこで問題になってきているのが、脂肪肝なのです。

先日、脂肪肝関連の講演会にいくつか出席してきました。

脂肪肝は、アルコール性と非アルコール性に
大別できます。
アルコール性脂肪肝は、男性で1日30g、女性で1日20以上
の摂取にて起こりやすく、習慣性飲酒の方は注意が必要です。

また、非アルコール性脂肪肝は内臓脂肪の蓄積しやすい
人に多く、糖尿病やメタボリックシンドロームに高率に
合併します。

慢性炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎はNAFLDといわれていますが
2%程度はNASHといわれ、繊維化、肝硬変に移行するといわれています。
脂肪肝は我が国に2000万人いるともいわれ、肝硬変に移行する
患者さんは60〜70万人いるのではとの試算も出ています。

当院でも、採血、腹部エコーなどにてたくさんの脂肪肝の
診断にいたる患者さんがいらっしゃいます。

高コレステロール血症の患者さんは、ゼチーアという
脂肪の吸収を抑制するお薬で、脂肪肝が改善するという
データがあり、実際に治療を行なっておりますが、現時点では
脂肪肝の治療薬は存在しないのが現状です。

そこで大事なのは、食事であり、運動療法なのです。

しかし、なかなかうまくいかないのが現実です。
運動療法については最近の知見では、有酸素運動は当然
必要ですが、その前に10分でも筋トレ、たとえばスクワットなどを
取り入れると、より脂肪が燃焼しやすいことがわかってきています。

またNAFLDの改善には、ビタミンEや乳酸菌、ビフィズス菌が
有効との報告もあります。

とにかく脂肪肝はたかが脂肪肝といわず、肝の繊維化である
Fib-4 indexという指標などにて評価を行い、必要であれば専門の
肝臓内科の受診などの必要がありますので、かかりつけ医に
相談することが必要です。

当院でも、循環器疾患などにも合併しやすい脂肪肝の指導や
治療に注力していますので、お気軽にご相談ください。

 

SGLT-2阻害薬

2017-02-24

まだまだ寒い日が続きますね。
今回は糖尿病治療薬について考えたいと思います。

当院では循環器疾患の患者さんがたくさん通院されております。
循環器疾患の予防には生活習慣病である糖尿病についての
管理が重要です。
もちろん運動療法、食事療法に加え、
内服治療からインスリン治療まで幅広く行っておりますが、
今回は一番新しい機序の糖尿病治療薬について考えてみたいと
思います。

数年前にSGLT-2阻害薬という全く新しい機序のお薬が処方できる
ようになりました。

昨年ですが、このお薬に関するデータが
The New England Journal of Medicineという権威ある雑誌に掲載され、
第76回米国糖尿病学会(ADA2016)にて驚くべき結果が発表されました。

EMPA-REG OUTCOME試験は、世界42ヵ国、7,000人以上の
心血管疾患の既往歴を有する2型糖尿病の患者を対象とした
長期多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。

標準治療に糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬である
エンパグリフロジン(10 mgまたは25 mg、1日1回投与)を
上乗せした場合の効果について、標準治療にプラセボを
上乗せした場合と比較して評価したのです。
標準治療は、他の糖尿病治療薬および心血管治療薬
(血圧やコレステロールの治療薬を含む)となっています。
同試験の主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞または
非致死的脳卒中のいずれかの初回発現までの時間と定義されています。

中央値3.1年の観察期間において、エンパグリフロジンは、
プラセボ(偽薬)と比較すると、心血管死、非致死的心筋梗塞、
または非致死的脳卒中のリスクを
14%有意に低下させたのです。
心血管死のリスクは、プラセボと比較して38%低下し、
非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中のリスクには有意差は
認められなかったとのことです。

また、エンパグリフロジンはプラセボと比較し、それぞれのイベントにおいて
次の有意な変化をもたらしたとされています。
・ 腎置換療法(透析など)の開始を55%減少
・ 血中クレアチニン(通常、腎臓によって濾過される老廃物)の倍化を44%減少
・ マクロアルブミン尿への進行を38%減少

さらにエンパグリフロジンは、時間の経過に伴う腎機能の低下に関しても、
プラセボと比較して有意に抑制したのです。

同試験に参加した患者の大部分は、2型糖尿病に伴う
腎疾患に対して推奨される標準治療薬
(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬)を
既に服用されていましたが、このような標準治療に上乗せした場合でも、
エンパグリフロジンの腎に対する効果が認められたのです。
事後に行った部分集団解析の結果によると、ベースライン時における
腎機能障害もしくはアルブミン尿の有無に関わらず、
エンパグリフロジンによる一貫した腎アウトカムのリスク低下を認めています。
また、ベースライン時の腎機能障害の有無を問わず、
重篤な有害事象および治験薬の中止に至った有害事象に関しては、
エンパグリフロジンとプラセボとの間で同程度でした。

腎疾患による死亡は、エンパグリフロジン群で3例(0.1%)発現し、
プラセボ群では発現しなかったとされます。

全世界の2型糖尿病患者の2人に1人は腎疾患を発症し、腎不全を経て
最終的には透析が必要な状態に至るおそれがあるとされています。
この事実をふまえると、本試験の結果は臨床的に非常に重要なことなのです。
糖尿病は、患者さんが透析治療に至る最大の原因となっており、
この重大な医学的ニーズへの対処が期待できる新規治療薬は必要不可欠だと
思われ、今後の展開が期待される薬剤であることは間違いないと思います。

このように心臓病や腎不全などの予後に大きく影響する
糖尿病薬は他にはありません。
ですからこのお薬の試験の結果は非常にインパクトのあるものなどです。

当院では循環器疾患を合併する糖尿病の患者さんが多く
いらっしゃるためこのお薬に関しても前向きに投与を
検討することとしております。

そのような患者さんがおられましたらお気軽に相談されて下さい。

家族性高コレステロール血症

2016-06-29

梅雨のじとじとした日が続きますね。

先日はレパーサというコレステロールを下げる注射の新薬の
研究会に出席してきました。

家族性高コレステロール血症という疾患をご存知ですか?

生まれつき血中の悪玉コレステロールであるLDL(Low density lipoprotein)コレステロールが
異常に増えてしまう病気、病態です。
LDLコレステロールというのは、肝臓の細胞表面にあるLDL受容体と呼ばれる蛋白によって
細胞の中に取り込まれ、壊されます。
家族性高コレステロール血症は、LDL受容体の遺伝子やこれを働かせる遺伝子に異常があり、
血液中のLDLコレステロールが細胞に取り込まれないで、血液の中に溜まってしまう病気です。

私たちの遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが 一組となって出来ています。
LDL受容体やその働きに関わる遺伝子に、この両方に異常がある場合をホモ接合体と呼び、
いずれか一方のみに異常が認められる場合をヘテロ接合体と呼びます。

家族性高コレステロール血症ホモ接合体の患者さんは、血清総コレステロール値が
生まれつき非常に高く、通常、450 mg/dlを 超えることが多いです。(健常人は120~220mg/dl)
このため、適切に治療がなされないと、幼い頃から動脈硬化が進行して、
小児期に心筋梗塞などの命に関わる病気を発症するのです。

以前当院にも17歳の兄が心筋梗塞で死亡した妹さんが受診されたことがありましたが
妹さんも高コレステロール血症を発症しておりましたので診断に至ったことがあります。

この病気の患者さんは100万人に1人、日本においては120人程度とされていましたが、
この病気にかかわる遺伝子が見つかってきており、
それよりもっと多いといわれてきているのです。
最近の知見ではホモは620人に1人、ヘテロは300人に1人ほどではないかといわれてきており
遺伝子であるPCSK9の変異が原因といわれ、日本人には多いこともわかってきています。

家族性高コレステロール血症ホモ接合体は、父親と母親の両方に高コレステロール血症が
ある人に多いといわれ悪玉コレステロールであるLDLを代謝する、
LDL受容体やそれに関わるPCSKなどの遺伝子に異常があり、
LDLが肝臓で代謝されないで血液中に長時間残ってしまい、
動脈硬化を引き起こしてしまうことがわかっています。
家族性高コレステロール血症ホモ接合体は、LDLがほとんど代謝されず、
ヘテロ接合体は、LDLが健常人の半分程度代謝される病気です。

両親がともに家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の場合、
1/4の確率でホモ接合体の子供が生まれます。
両親のいずれか片方がヘテロ接合体である場合、1/2の確率でヘテロ接合体が生まれます。

家族性高コレステロール血症ホモ接合体は、10歳までに肘や膝などの皮膚に黄色腫と呼ばれる
黄色い疣状の塊が見られることが多いといわれます。
成長とともに、結節状にもりあがった黄色腫が認められるようになります。
肘や膝、手首、おしり、アキレス腱、手の甲などに多く認められます。
大動脈弁や冠動脈に動脈硬化が進行すると、階段を上がると胸が痛い、苦しなどの
症状が出ることがあります。
ヘテロ接合体では、重症例で皮膚の黄色腫が見られることがありますが、
10歳以後におきることが多いとされています。

治療としては食事療法(低脂肪・低コレステロール食)、
運動療法に加えスタチン製剤をはじめとする脂質低下薬により治療を行います。
単剤では効果が十分でない場合が多く、治療目標に達しなければエゼチミブ、
プロブコール等を追加します。
それでも効果が足りない場合に、LDLアフェレ-シスという透析のような治療法があります。
LDLアフェレシスは、体外循環を用いて悪玉コレステロールである
LDLを取り除くことができる治療法です。
機器を用いて血液から悪玉であるLDLを直接除去する方法で、
腎不全の患者さんに行う人工透析装置に似た機械を用います。
1~2週間に1回の頻度で、一生、続けなければなりません。
ベッド上で治療の時間中、安静にできるようになる4 歳~5歳には
治療を始めることが望ましいとされます。
治療の開始が遅れれば遅れるほど動脈硬化は進行してしまいますので
診断、治療を速やかに行なう必要があります。
LDLアフェレシスなどの適切な治療を行わない場合、
予後は極めて不良なのです。

しかし今回レパーサ注が出現してきたことで、アフェレーシスなど経済的にも肉体的にも
大変な治療から患者さんが解放される可能性が高く、
医療費が削減できることが期待されているのです。

また、最近の知見では冠動脈疾患を発症した二次予防の患者さんの
脂質管理目標の達成率は62%程度といわれており、
今後この薬剤がハイリスクの患者さんの二次予防に役立つことが期待されています。

当院でも高血圧をはじめ、高コレステロール血症(高脂血症、脂質異常症)の患者さんが
たくさんいらっしゃいます。
当院では管理目標にくわえ、頸動脈プラークの測定など患者さんの脂質管理の評価を
しっかりと行い、丁寧に食事や運動の指導を行った上で
必要ならスタチンなどでの治療を行っています。

高脂血症、高コレステロール血症を指摘されたり、治療に疑問のある方などの
セカンドオピニオンも積極的に行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

インフルエンザ

2016-01-27

今年は最初は暖冬でしたが突然寒くなりましたね。

感染症の動向ですが、今年は年明けに休日当番医も
いたしましたが、ほとんどインフルエンザは検出しませんでした。
ところが、今月後半になり、インフルエンザ、特にA型の検出、
治療症例が増えています。

当院は、内科・循環器科を標榜いたしておりますが、
感染症に注力いたしております。
循環器疾患や呼吸器疾患を抱えている患者さんこそ
感染症が重症化することが多いのです。
ワクチンの重要性や、感染症に対しての指導など
丁寧な説明を心掛けています。

インフルエンザ診断についてですが、当院の以前のブログでも
取り上げていますが、インフルエンザの迅速検査キットは
メーカーによっても最良の検査精度を得られる
時間は異なります。

基本的には通常のキットであれば、発熱後12時間経てば良い検査結果が
得られるとされているのですが、実際の診療現場では、
発熱後18時間経過したほうが結果が出やすいといわれています。
これは採取した粘液中のウイルスの量に比例して
検査結果の精度が変わる為です。

24時間経てばより結果が出やすいかも知れませんが
抗ウイルス薬は発症後48時間以内に飲まないと
効果がありませんから、それでは治療が遅れてしまいます。
そのため、検査は、発熱後18時間くらいが
最適ではないかといわれていました。
ですから、以前なら発熱してから、あまりのも時間がたっていないと、
翌日に受診して、再度検査を行うこともありました。

しかし昨年より、当院では、富士ドライケムIMMUNO AG1という
ウイルスを増殖する機械による判定方法を導入いたしました。

昨年も、機械による早期判定のすごさに驚くことが多かったのですが、
今年度の機械による感染判定で驚いていることがあります。

今年はインフルエンザの流行は遅れておりますが、徐々に増加しています。
最近のインフルエンザはほとんどA型を検出いたしますが、
この装置による検出率の高さがすごいのです。
従来なら、発熱直後の患者さんは、翌日受診していただいていたりしておりましたが
今年はほとんど検査で検出し、治療に結びついています。

現段階ですが、家族がインフルエンザと診断され、発熱したご家族を
わずか2時間で検出できたりしております。
我々も驚いていますが、富士の検出装置は
いち早く患者さんを治療できるので、ほとんどこれを使用することにいたしております。

これからも、いち早くインフルエンザを治療することに全力を尽くしていきたいと思います。

FUJIFIRUMの装置のCMです。

http://and-fujifilm.jp/virus/movie.html

テレビよりわかりやすいと思います。

 

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