院長ブログ
COVID19の最新事情
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類となった2023年5月~24年4月の1年間で、
死者数が計3万2576人に上ったことが24日、厚生労働省の人口動態統計で分かった。
季節性インフルエンザの約15倍と格段に多く、大部分を高齢者が占めます。
政府は重症化リスクの低下を理由に新型コロナの類型を引き下げ、
日常生活の制約はほぼなくなりましたが、今も多くの人が脅威にさらされています。
例年冬にかけて感染者が増える傾向にあります。
人口動態統計のうち、確定数(23年5~12月)と、確定前の概数(24年1~4月)に
計上された新型コロナの死者数を集計。その結果、3万2576人となり、65歳以上が約97%でした。
同時期のインフルエンザの死者数は2244人。
新型コロナは、ウイルスが次々と変異して高い感染力を持つ上、病原性はあまり低下せず、
基礎疾患のある高齢者が感染して亡くなっているとみられます。
当院ではコロナワクチン・インフルエンザワクチンの定期接種を行っています。
非課税の方は非課税証明書かマイナンバーカードでの確認で無料接種となりますが、
課税の方はコロナワクチンが2000円、インフルエンザワクチンは65歳以上では1500円となります。
65歳以上の方や、60歳以上で基礎疾患のある方はなるべくワクチンを接種することをお勧めします。
脂肪肝について
先日開催された欧州肝臓学会国際肝臓学会議2023で、
これらの名称が変更されることが発表されました*1。
その理由として、”alcoholic”や”fatty”という単語が
”飲んだくれ”や”肥満”という意味を含んでおり、
患者さんの大半が非難されていると感じていることが挙げられています。
MAFLDとMASH
原因に関わらずすべての脂肪肝を表すものを”SLD(steatotic liver disease)”としました。
また新たな名称としてNAFLDはMASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)へ
NASHはMASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)への変更が望ましいと提案されました。
“metabolic”とは”代謝性”という意味で、脂肪肝には糖尿病や脂質異常症、肥満、高血圧など
代謝性の疾患が合併することが多く、MAFLDやMASHの定義は
これらの代謝異常が合併している脂肪肝であることです。
MAFLDとNAFLDの違い
MAFLDとNAFLDは名前が変わっただけではありません。
NAFLDの定義は
① 脂肪肝がある
② アルコール摂取歴がない(エタノール換算男性30g/日以下、女性20g/日以下)
③ 他の肝疾患原因がない
でしたが、MAFLDの定義は
① 脂肪肝がある
② BMI 25以上(日本を含むアジアでは23以上)または
糖尿病、または代謝障害があるもの全て
アルコール歴、他の肝疾患原因の有無は問わないとなっています。
このためこれまでエタノール摂取量60g/日以上が診断基準であった
アルコール性肝障害にもNAFLDにもあてはまらなかった、
中等度の飲酒者もMAFLDに分類されるようになり、これらを特に
MetALD(Metabolic alcoholic liver disease)としました。
その他の脂肪肝
脂肪肝のうち、NAFLDで代謝異常や原因となるような疾患もないものはcryptogenic SLD,
薬物性,Wilson病などに起因する場合はspecific aetiology SLDと診断します。
以上は海外での動きです。日本でもこの新たな分類に沿って消化器病学会*2や
肝臓学会*3が「NAFLD/NASH 診療ガイドライン」を改訂するとの声明を発表しました。
今後はNAFLDやNASHではなく、MAFLD・MASHが使われるようになるかもしれません。
出典
*1: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37364790/
*2: https://www.jsge.or.jp/news/archives/733
*3: https://dx-mice.jp/jsh_cms/files/info/1328/20230929%E3%80%80oshirase62.pdf
食と環境
当法人はグループホームを運営しています。
認知症と診断されている患者様などが27人共同で生活されており、
当院より訪問診療などを行って医学的管理も行っています。
ご高齢の患者様が多く、どうしても高齢になると食欲の低下などが課題となってきます。
先日、介護スタッフ主催で当院の駐車場でのバーベキュー大会が開催されました。
当日は雨天も心配されましたが、なんとか開催できました。
普段は寝たきりの患者様も車いすを利用し、ほとんどの患者様にご参加いただきました。
職員が準備した焼きそばやおにぎり、そして炭火での焼肉を患者様に
召し上がっていただきました。
そこで感じたことですが、普段は流動食でなかなか食が進まない患者様もおられるのですが、
その日は焼きそばなど(患者様向けに肉などもやわらかく調理しています)を
モリモリと食べられていることに驚きを隠せませんでした。
人は環境により食欲が刺激されるとの研究は多数の報告がありますが、
まさしくそうだなと痛感した次第でした。
当施設でもこれからもこのような取り組みを継続して行っていこうと思った次第です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/20/0/20_0_94/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajscs/20/0/20_0_94/_article/-char/ja/
高血圧と運動
血圧については大原則なのは減塩なのですが、最近の研究では有酸素運動の重要性が次々と報告されています。
1日の歩数を3000歩増やすと高血圧を大幅に軽減できる
高血圧のある高齢者は、1日の歩数を3,000歩増やすと、血圧を大幅に低下できることが明らかになりました。
ウォーキングは、誰でも、いつでも、どこでも取り組める運動として人気が高いです。
「米国の高齢者の80%は高血圧と推定されています。血圧値を正常に管理することで、
心不全・心臓病・脳卒中・腎臓病などの深刻な病気のリスクを減らすことができます。
ご高齢の方は、1日の歩数を3,000歩増やすと、高血圧を大幅に軽減できることが分かりました。
これは、個人差はありますが、1日30分のウォーキングに相当します。
最小限の運動介入で効果をえられるのです。
脳卒中リスクを36%減少するのに相当
研究は、高血圧があり、1日に座ったまま過ごす時間が長い、年齢が73歳(中央値)の高齢者21人(男性8人、女性13人)を対象に実施したもの。
参加した高齢者の年齢は68歳~78歳で、1日の歩数は平均して約4,000歩でした。 その結果、歩数を3,000歩程度増やし、
1日に7,000歩にすると、参加者の収縮期(最高)血圧は平均7ポイント、拡張期(最低)血圧は平均4ポイント、それぞれ低下したとされます。
これは、全死因による死亡の相対リスクが11%減少し、心血管死亡のリスクは16%減少、心臓病のリスクは18%減少、
脳卒中のリスクは36%減少するのに相当するとされています。 参加者には、歩数計、血圧計、毎日どれだけ歩いたかを記録する
日記などのキットが与えられました。
1日に3000歩増やすのは難しくない
これまでの研究でも、運動が高血圧のある成人の血圧値を即時的かつ長期的に下げるのに効果的であることが示されています。
「年齢を重ねて、長生きすると、ほとんどの人は血圧値が高くなります。ウォーキングは誰でも簡単に取り組め、特別な道具は必要なく、
いつでもどこでも行うことができるのです。 「歩数を3,000歩増やすと、多くの高齢者は1日の歩数は7,000歩となり、
運動ガイドラインで推奨された運動量をみたすことができます。1日に3,000歩増やすことは、難しいことではないのです。
米国の運動ガイドラインでは、活発な運動や身体活動を、週に150分行うことが推奨されています。
高齢者が、毎日の歩数を1日あたり3,000歩増やすと、その運動量を満たすことができるとされています。
運動には降圧薬と同等の効果が
降圧薬などを服用している人でも、運動療法と薬物療法を組み合わせることで、治療効果をさらに増強できる可能性があるというのです。
「高齢者が運動に取り組むと、降圧薬と同等の血圧管理をえられることも分かりました。参加者のうち8人は降圧薬を服用していましたが、
毎日の歩数を増やすことで、やはり収縮期血圧の改善がみられましたというのです。
「生活スタイルのシンプルな介入により、体系的な運動指導や、薬物療法と同じくらいの効果をえることが可能であることが
示されたのは興味深いです」としている。 なお、歩行速度や歩行を継続して行うことは、単純に歩数を増やすことに比べて、
それほど重要ではないことも分かりました。 「この場合で重要なのは、運動や身体活動の強度ではなく、
その量であることが示されました。歩数を増やすことを目標にすると、健康上のベネフィットをえられるとされています。
今回の研究はパイロット研究であり、研究グループはえられたデータを使用し、より大規模な臨床試験を実施することを計画しているといいます。
Increasing Steps by 3,000 Per Day Can Lower Blood Pressure in Older Adults (コネチカット大学 2023年9月26日)
Increasing Lifestyle Walking by 3000 Steps per Day Reduces Blood Pressure in Sedentary Older Adults with Hypertension:
Results from an e-Health Pilot Study (Journal of Cardiovascular Development and Disease 2023年7月27日)
Increasing Lifestyle Walking by 3000 Steps per Day Reduces Blood Pressure in Sedentary Older Adults with Hypertension:
Results from an e-Health Pilot Study (BMJ Open Sport & Exercise Medicine 2023年7月27日)
当院では高血圧の患者様には丁寧に疾患についてや、治療法につきまして説明を行っております。
気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
動脈硬化性疾患ガイドライン2022
当院は生活習慣病、特に動脈硬化性疾患の診療に特に注力しております。
今回は5年ぶりに改訂され7月4日に発刊された動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版について
解説を行いたいと思います。
今回の改訂でキーワードとなるのが、「トリグリセライド(中性脂肪、以下TG)」「アテローム血栓性脳梗塞」「糖尿病」です。
<2022年度版の主な改訂点>
1)随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値を設定。
2)脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、
冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアが採用。
3)糖尿病がある場合のLDLコレステロール(LDL-C)の管理目標値について、末梢動脈疾患、
細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合は100mg/dL未満とし、
これらを伴わない場合は従前どおり120mg/dL未満とした。
4)二次予防の対象として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓症脳梗塞も追加し、LDL-Cの目標値は100mg/dL未満とした。
さらに二次予防の中で、「急性冠症候群」「家族性高コレステロール血症」「糖尿病」
「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併」の場合は、LDL-Cの管理目標値は70mg/dL未満とした。
5)近年の研究成果や臨床現場からの要望を踏まえて、新たに下記の項目を掲載。
(1)脂質異常症の検査
(2)潜在性動脈硬化(頸動脈超音波検査の内膜中膜複合体や脈波伝播速度、
CAVI:Cardio Ankle Vascular Indexなどの現状での意義付)
(3)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
(4)生活習慣の改善に飲酒の項を追加
(5)健康行動倫理に基づく保健指導
(6)慢性腎臓病(CKD)のリスク管理
(7)続発性脂質異常症
変更に至った主な理由
1)について、「TGは食事の摂取後は値が上昇するなど変動が大きい。また空腹時でも非空腹時でも値が高いと
将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症や死亡を予測することが国内の疫学調査で示されている。
国内の疫学研究の結果およびESC/EASガイドラインとの整合性も考慮して、
空腹時採血:150mg/dL以上または随時採血:175mg/dL以上を高TG血症と診断する」とコメントされています。
2)については、吹田スコアに代わり今回では久山町研究のスコアを採用。その理由として、
「吹田スコアの場合、研究アウトカムが心筋梗塞を含む冠動脈疾患発症で脳卒中が含まれていなかった。
久山町研究のスコアは、虚血性心疾患と、脳梗塞の中でとくにLDL-Cとの関連が強い
アテローム血栓性脳梗塞の発症にフォーカスされていた点が大きい」と説明。
3)については、ESC/EASガイドラインでの目標値、国内のEMPATHY試験やJ-DOIT3試験の報告を踏まえ、
心血管イベントリスクを有する糖尿病患者の一次予防において、十分な根拠が整っている。
4)については、国内でのアテローム血栓性脳梗塞が増加傾向であり、再発予防が重要になるためである。
また二次予防の場合、糖尿病の合併がプラーク退縮の阻害要因となることなどから
「これまで厳格なコントロールは合併症などがあるハイリスクの糖尿病のみが対象だったが、
今回より糖尿病全般においてLDL-C 70mg/dL未満となった」と解説されています。
5)の(7)続発性脂質異常症は新たに追加され、他疾患などが原因で起こる続発性なものへの注意喚起として
「続発性(二次性)脂質異常症に対しては、原疾患の治療を十分に行う」とし、甲状腺機能低下症など、
続発性脂質異常症の鑑別を行わずに、安易にスタチンなどによる脂質異常症の治療を開始すると
横紋筋融解症などの重大な有害事象につながることもあるので注意が必要、と記載されています。
当院では脂質異常症の患者さんがたくさんおられますが
ガイドラインは当然のことながら、画像診断も組み合わせ、患者さんの最適な治療になるよう
常に努めております。
脂質異常症のセカンドオピニオンも受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。
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