SGLT-2阻害薬

2017-02-24

まだまだ寒い日が続きますね。
今回は糖尿病治療薬について考えたいと思います。

当院では循環器疾患の患者さんがたくさん通院されております。
循環器疾患の予防には生活習慣病である糖尿病についての
管理が重要です。
もちろん運動療法、食事療法に加え、
内服治療からインスリン治療まで幅広く行っておりますが、
今回は一番新しい機序の糖尿病治療薬について考えてみたいと
思います。

数年前にSGLT-2阻害薬という全く新しい機序のお薬が処方できる
ようになりました。

昨年ですが、このお薬に関するデータが
The New England Journal of Medicineという権威ある雑誌に掲載され、
第76回米国糖尿病学会(ADA2016)にて驚くべき結果が発表されました。

EMPA-REG OUTCOME試験は、世界42ヵ国、7,000人以上の
心血管疾患の既往歴を有する2型糖尿病の患者を対象とした
長期多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。

標準治療に糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬である
エンパグリフロジン(10 mgまたは25 mg、1日1回投与)を
上乗せした場合の効果について、標準治療にプラセボを
上乗せした場合と比較して評価したのです。
標準治療は、他の糖尿病治療薬および心血管治療薬
(血圧やコレステロールの治療薬を含む)となっています。
同試験の主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞または
非致死的脳卒中のいずれかの初回発現までの時間と定義されています。

中央値3.1年の観察期間において、エンパグリフロジンは、
プラセボ(偽薬)と比較すると、心血管死、非致死的心筋梗塞、
または非致死的脳卒中のリスクを
14%有意に低下させたのです。
心血管死のリスクは、プラセボと比較して38%低下し、
非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中のリスクには有意差は
認められなかったとのことです。

また、エンパグリフロジンはプラセボと比較し、それぞれのイベントにおいて
次の有意な変化をもたらしたとされています。
・ 腎置換療法(透析など)の開始を55%減少
・ 血中クレアチニン(通常、腎臓によって濾過される老廃物)の倍化を44%減少
・ マクロアルブミン尿への進行を38%減少

さらにエンパグリフロジンは、時間の経過に伴う腎機能の低下に関しても、
プラセボと比較して有意に抑制したのです。

同試験に参加した患者の大部分は、2型糖尿病に伴う
腎疾患に対して推奨される標準治療薬
(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬)を
既に服用されていましたが、このような標準治療に上乗せした場合でも、
エンパグリフロジンの腎に対する効果が認められたのです。
事後に行った部分集団解析の結果によると、ベースライン時における
腎機能障害もしくはアルブミン尿の有無に関わらず、
エンパグリフロジンによる一貫した腎アウトカムのリスク低下を認めています。
また、ベースライン時の腎機能障害の有無を問わず、
重篤な有害事象および治験薬の中止に至った有害事象に関しては、
エンパグリフロジンとプラセボとの間で同程度でした。

腎疾患による死亡は、エンパグリフロジン群で3例(0.1%)発現し、
プラセボ群では発現しなかったとされます。

全世界の2型糖尿病患者の2人に1人は腎疾患を発症し、腎不全を経て
最終的には透析が必要な状態に至るおそれがあるとされています。
この事実をふまえると、本試験の結果は臨床的に非常に重要なことなのです。
糖尿病は、患者さんが透析治療に至る最大の原因となっており、
この重大な医学的ニーズへの対処が期待できる新規治療薬は必要不可欠だと
思われ、今後の展開が期待される薬剤であることは間違いないと思います。

このように心臓病や腎不全などの予後に大きく影響する
糖尿病薬は他にはありません。
ですからこのお薬の試験の結果は非常にインパクトのあるものなどです。

当院では循環器疾患を合併する糖尿病の患者さんが多く
いらっしゃるためこのお薬に関しても前向きに投与を
検討することとしております。

そのような患者さんがおられましたらお気軽に相談されて下さい。

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